名古屋の鬼について、わたしが嬉しかったこと。

 ずっと書こうと思っていながら書けない、ほかのことに気をとられる日が続いていた。
 で、これだけは書き残しておこうと思うのが、
 名古屋の鬼について。
 殺人事件を起こしている。
 とされている。ニュースでは。
 まあおそらくその通りなんだろうなと思う、というか、そういうことでいいやというか、
 それでもいいや、というかね。
 わたしは彼と出会ったとき、なぜか知らないけどとてもわくわくして、笑ってしまったんだ。
 ディーラーをしていて、彼が客で、
 一千万円の時計、二千万円の車、二三百万円の指輪、それから、それから、という金尽くしの彼が、博打なんてものをしにきている。
 彼が、自分の収支、勝っているか負けているか、どのくらいなのか、具体的な数字と自分の財布の中身とを照らし合わせだしたときに、
 わたしは大いに笑ってしまって、
 あなた、博打しにきたんでしょう?
 一か八かの一発勝負をしにきたんでしょう?
 金の勘定ばかりやってないで遊びなよ、勝負しなよって心から思ってそう言ったの。
 わたしは彼のことを何も知らないけど、彼に対して恐怖心はないんだ。
 彼は世間では恐れられたり、忌み嫌われたり、しているのかもしれないけどわたしは、そんなふうには思わない。
 あの子は鬼なんだよって思っている。
 鬼って言うのは比喩じゃなくて、もうそのもの鬼ね。
 桃太郎が退治しにいったやつね。
 彼はわたしのことを妖精みたいだって言った。
 すごく可愛い、すごく素敵で魅力的だ、ご飯に行きたい、フレンチをご馳走するよって言った。
 実際にはフレンチじゃなくて寿司だったけどね。
 わたしは、彼がどういう人生を歩むのであれ、
 どういう何の何なのであれ、
 妖精みたいだ、と言ってくれた賛辞を確かに嬉しくにこにことして受け止めた、ということだけは、
 伝え得ないかもしれないが伝えたいな、という気持ちがしている。